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2008/02/09

イエス・ミュージックの夜3  ビル・ブラッフォードとこわれもの

さまざまな音が主張を持って組み合わされた「こわれもの」は、イエスの音楽の完成形です。ビル・ブラッフォードにとってもまた、プレイヤーとして新たな可能性に向かうきっかけとなりました。

プログレッシブ・ロックとしてのYesのドラムス/パーカッションというと、Alan Whiteではなく、Bill Brufordだという人が多いと思います。けれども、Billというミュージシャンにとっては、YesよりもKing Crimsonの方が重要だろうと思うのです。だから、89年にYesを脱退したJon AndersonがあらためてBill、Steve Howe、Rick Wakemanを集めて結成したもう1つのYesとも言うべきAnderson Bruford Wakeman Howe(ABWH)も、見方を変えるとKing Crimsonのリズム隊を擁したYesということになるわけです(ベースはTony Levinですから)。
そのBillは49年生まれ。クラシック演奏家からパーカッションのレッスンを受けたりジャズバンドでセッションしたりといった、ジャンルを超えたプレイヤーです。とはいえ、実は周囲の評価とは別に、ぼくとしてはBillの小気味良い演奏よりも、Alanの力強いドラミングの方が好きでした。

 そんなBillなのですが、「イエス・ストーリー 形而上学の物語」という本を読むと、面白いエピソードに出会います。バンドの初期、他のYesのメンバーはギャラなどのお金が入るとすぐに使ってしまうし、記録をつけていなかったといいます。あるはずのお金がいつのまにかなくなっているという。けれどもBillだけは収入をきちんと記録し、後で困らないようにしていました。しっかりとお金の管理をしていたということです。これを読んでぼくは何となく、30年前の音楽雑誌「ミュージックライフ」で毎月のように、Led ZeppelinのJimmy Pageがケチだというギャクが掲載されていたことを思い出してしまいました。それにしても、しっかりとした金銭感覚を持った、それでいて金遣いのいいかげんな他のメンバーを見守っていたという、けっこうBillというのはしっかりものでイイ奴なんじゃないかって、そう思えてしまうのです。

Billが参加したアルバムの中から、72年『Fragile』を取り上げたいと思います。このアルバムをYesの最高傑作だと思う人は少なくないでしょう。この後、何百回と演奏されることになる名曲「Roundabout」が収録され、カバーデザインも始めてRodger Deanによる幻想的な世界となりました。ブックレットまでついていて、まさにバンドとして頂点にきたのかな、というものです。
キーボードはRick Wakemanに交替しました。このことによって、より立体的な音楽になったのではないか、と思うのです。それは1曲目の「Roundabout」から明確になっています。ギターはハードなカッティングではなく、アコースティックな響きで入ってきます。ドライブ感のあるロックナンバーであるにもかかわらず、全編的にアコースティックギターの演奏が取り入れられている。ステージではアンコールナンバーとして、全編エレクトリックギターで盛り上がる曲なのに、スタジオではむしろ音の間が強調されているのです。これは、Steveのギター以上にRickのキーボードが多彩だったし、だからこそ可能になったアレンジだと思うのです。音の厚みにまぎれるのではなく、存在感のある音で世界を構成していくというものです。
同じことは、Rickのピアノ演奏が美しい「South Side Of The Sky」やChris Squireのベースが引っ張る「Heart Of Sunrise」でも同様です。そして、こうした演奏の中で、Billのドラミングもこれまで以上に存在感というか、強い自己主張を持つようになります。ぼくはとりわけ、「South Side Of The Sky」におけるドラマチックな演奏は、YesにおけるBillのベストの1つだと思っています。



『Fragile』には5人のメンバーのソロが収録されていますが、Billのそれは「Five Per Cent For Nothing」というわずか16小説、40秒ほどのナンバーです。ちょっと自嘲気味のタイトルだとは思います。まだ作曲ということを本格的に行っていませんでしたし、だからパーカッションの限界と可能性をとにかく自分なりに示すことにもなってしまいました。結果的にこのアルバムによって、Billもまた他のプレイヤーと同様に多彩な音を展開し、世界を構築していく方向に進みました。

続く『Close To The Edge』ではメンバーの自己主張はさらに強くなり、レコーディングは混迷を極めていくことになります。そうした中、Billはこのアルバムを最後にYesを脱退し、King Crimsonに移籍します。そこにこそ、Billは次の可能性を見出しました。
残ったYesのメンバーは、機用で力強いドラミングのAlan Whiteを新メンバーに迎えます。ベースすらリード楽器となってしまったバンドには、Alanが必要だったのだと思います。








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