世界で最も過酷な人間ドラマ…『ツール・ド・フランス』
<勝つには緻密な戦略や駆け引きだけではなく、周りの選手が
認める“人間性”も必要>
皆さんはツール・ド・フランスで必ず、集団(=プロトン)で走行している光景を目にすると思う。
こうした集団は意味もなく固まっているのでなく、200kmにも及ぶ長丁場は、その殆どが最後の数キロで決着がつく。
だからそれまでにライバルを疲れさせ、いかにして自分の優位な状況に持っていくかが重要である。
ライバルの行く手をさえぎり、孤立させ、速度を落とさせ、時にはみんなでスピードを上げ、早く走らせ疲れさせるなど、多くの「フリッキング(ドイツ語でコケにするという意味、つまり、ある特定の選手をいじめる、やっつけること)」がプロトンで盛んに行われている。
そしてその事実は、ロードレースは自分の力だけでは勝てない、といわれる所以でもある。
ツール・ド・フランスで勝つにはチームメイトはもちろん、競争相手の好意と協力も欠かすことはできない。
あいつはライバルチームの選手だが、あの選手のために、あの選手と一緒に自転車に乗りたい、とライバルが思ってくれないと駄目なのだ。
ちなみにランス・アームストロングが、まだ礼儀も知らず、攻撃的な性格だった若い頃に出場した数々のロードレースで、ライバルや偉大な先輩レーサーに暴言をあびせたり、常識はずれのレース運びをして、周りの選手の反感や怒りを買い、フリッキングを仕掛けられ、惨憺たる結果に終わったことを何度も経験し、ロードレースは一人では勝てない、勝つにはライバルにも信頼され、尊敬される人間性も必要であると述べている。
毎年スカイパーフェクTVで放送されているツール・ド・フランスを見ていると、一見なんでもない集団走行も、目を凝らしてみると選手同士の駆け引きが、集団内での位置取りや、仕草などの動きを通して垣間見ることができて非常に面白い。
そしてこの駆け引きがあるからこそ、ツール・ド・フランスが史上最大の人間ドラマと言われている大きな理由の一つであろう。
<一切の贅肉を省き、最先端技術が投入された
究極の自転車界のF1マシン>
レースに使用される自転車は『ロードバイク』という競技用自転車。
選手達の能力が最大限引き出されるように、最先端の技術が投入され、非常に軽量で耐久性高く作られている。
素材には特殊カーボンが使用され、6〜7kgの軽さ(何とB5ノートパソコンと同じ位の重さ!)ながら、70km/hにもなるスプリントや120km/hを越える山岳コースの下りにも耐える。
しかも自転車に備わっているスピード計やペダル回転数、選手が身に付けている心拍計のデータは、無線で常に後方のサポートカーに送信されていて、監督がその状況を把握し、選手に指示を送ることも出来るようになっている。
その車両には数億円の開発費が投入され、一台の価格は百万〜数百万円というから本当に驚きだ。
人間の体力を極限にまで引き出し、効率を追求し進化した『ロードバイク』は、地球上で最も効率の良い乗り物と言っていいのではないだろうか。
<激動の展開を見せた2007年のツール・ド・フランス>
一言で表すと今年のツール・ド・フランスは荒れた。
* ドーピング問題
優勝候補といわれ、レース終盤(第16ステージ)まで断トツのトップにいたミカエル・ラスムセン(デンマーク)のアンチドーピング違反(レース前のドーピング検査を逃れるため、自分の居場所を正確に伝えていなかった、という疑惑)。
同じく優勝候補だったアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)の輸血ドーピング違反が発覚し、レース終盤まで、トップ争いをしていた選手二人が居なくなってしまった。
その他にも3名の選手のドーピング違反が発覚し、一人の選手の失格により9人のチーム全員が出場停止となるペナルティ規則のため、終盤は優勝候補だけでなく、その所属チーム全員が居なくなる、という大波乱が起こった。
それにしても、日頃からドーピングに引っかからないよう、熱や咳がでても風邪薬さえ飲まず、サプリメントなどの摂取にも細心の注意を払うなど、一切の薬物もしくはその類の摂取を控えている選手達に何が起こったのだろうか。
過酷なレースであるがゆえに、誘惑に負けて手を出してしまった選手もいるし、いや自分はドーピング違反になるとは知らなかった、と主張する選手もいるが、観る者である私たちは、薬物などの力を借りず、己の肉体だけで困難に立ち向かう姿に感動するのだ。
* 見ている私たちも選手と一緒に、21日間のフランス・ショートトリップへ

このレースのもうひとつの魅力は、TV画面に映るフランスの美しい景色や、観客の愉しい応援風景を見ること。
レースが開催される毎年7月は27ヶ所もの世界遺産を抱える屈指の観光大国、フランスの素晴らしい映像を見ることができる、またとないチャンス。
年ごとにコースが変わるこのレースは、様々なフランスの名所を通過するように組まれている。
今年の特徴は13年ぶりに英国もコースに組み込まれ、トラファルガー広場が壮大なレースの出発点となった。
もちろん、フランス国内では、中世の趣を今に残す古城や大聖堂を初めとする歴史建造物から、一面に広がるひまわり畑、目のくらむような断崖のピレネー山脈やアルプス、そして栄光の最終ゴール地点のパリシャンゼリゼ通り。
その他にも選手が通り過ぎる、名も知らぬ小さな街のたたずまいも、見る者を小さな旅情へ誘ってくれる。
ちなみにTV中継はココ最近、深夜の場合が多く、気軽に見れないのが現状だ。しかし、ネット上で様々なツール・ド・フランスのサイトが開設されているので、それらでリアルタイムな情報を得ることができる。
中でも「masciclismo」では現地まで足を運んでレポートをしているので、かなりコアな情報も得られる。
http://masciclismo.web.infoseek.co.jp/index.html
* アームストロング以来のスター誕生の予感!?スペインの若手闘牛士
『アルベルト・コンタドール』が若干24歳にして総合優勝!
スペイン人の総合優勝は1991年から1995年まで5連覇をなしとげたミゲール・インデュライン以来12年ぶり。
もともとは同じチームに属するエース、ライプハイマーという選手のアシスト役であったアルベルト・コンタドールであったが、過酷な山岳ステージで強さを発揮し、総合優勝を果たした。
ちなみにこのコンタドールが乗っていたバイクのメーカーはトレック(アメリカ)。
7連覇を果たしたランス・アームストロングも愛用していた、アメリカのトップブランドである。
今年もトレックに乗っている選手の活躍が目立った。
次回は、あのランス・アームストロングにスポットを当てて話をしたい。
写真提供: 自転車レース応援サイト『mas.ciclismo(マス・シクリスモ)』
認める“人間性”も必要>
皆さんはツール・ド・フランスで必ず、集団(=プロトン)で走行している光景を目にすると思う。 こうした集団は意味もなく固まっているのでなく、200kmにも及ぶ長丁場は、その殆どが最後の数キロで決着がつく。
だからそれまでにライバルを疲れさせ、いかにして自分の優位な状況に持っていくかが重要である。
ライバルの行く手をさえぎり、孤立させ、速度を落とさせ、時にはみんなでスピードを上げ、早く走らせ疲れさせるなど、多くの「フリッキング(ドイツ語でコケにするという意味、つまり、ある特定の選手をいじめる、やっつけること)」がプロトンで盛んに行われている。
そしてその事実は、ロードレースは自分の力だけでは勝てない、といわれる所以でもある。
ツール・ド・フランスで勝つにはチームメイトはもちろん、競争相手の好意と協力も欠かすことはできない。
あいつはライバルチームの選手だが、あの選手のために、あの選手と一緒に自転車に乗りたい、とライバルが思ってくれないと駄目なのだ。
ちなみにランス・アームストロングが、まだ礼儀も知らず、攻撃的な性格だった若い頃に出場した数々のロードレースで、ライバルや偉大な先輩レーサーに暴言をあびせたり、常識はずれのレース運びをして、周りの選手の反感や怒りを買い、フリッキングを仕掛けられ、惨憺たる結果に終わったことを何度も経験し、ロードレースは一人では勝てない、勝つにはライバルにも信頼され、尊敬される人間性も必要であると述べている。毎年スカイパーフェクTVで放送されているツール・ド・フランスを見ていると、一見なんでもない集団走行も、目を凝らしてみると選手同士の駆け引きが、集団内での位置取りや、仕草などの動きを通して垣間見ることができて非常に面白い。
そしてこの駆け引きがあるからこそ、ツール・ド・フランスが史上最大の人間ドラマと言われている大きな理由の一つであろう。
<一切の贅肉を省き、最先端技術が投入された
究極の自転車界のF1マシン>
レースに使用される自転車は『ロードバイク』という競技用自転車。 選手達の能力が最大限引き出されるように、最先端の技術が投入され、非常に軽量で耐久性高く作られている。
素材には特殊カーボンが使用され、6〜7kgの軽さ(何とB5ノートパソコンと同じ位の重さ!)ながら、70km/hにもなるスプリントや120km/hを越える山岳コースの下りにも耐える。
しかも自転車に備わっているスピード計やペダル回転数、選手が身に付けている心拍計のデータは、無線で常に後方のサポートカーに送信されていて、監督がその状況を把握し、選手に指示を送ることも出来るようになっている。
その車両には数億円の開発費が投入され、一台の価格は百万〜数百万円というから本当に驚きだ。
人間の体力を極限にまで引き出し、効率を追求し進化した『ロードバイク』は、地球上で最も効率の良い乗り物と言っていいのではないだろうか。
<激動の展開を見せた2007年のツール・ド・フランス>
一言で表すと今年のツール・ド・フランスは荒れた。
* ドーピング問題
優勝候補といわれ、レース終盤(第16ステージ)まで断トツのトップにいたミカエル・ラスムセン(デンマーク)のアンチドーピング違反(レース前のドーピング検査を逃れるため、自分の居場所を正確に伝えていなかった、という疑惑)。
同じく優勝候補だったアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)の輸血ドーピング違反が発覚し、レース終盤まで、トップ争いをしていた選手二人が居なくなってしまった。
その他にも3名の選手のドーピング違反が発覚し、一人の選手の失格により9人のチーム全員が出場停止となるペナルティ規則のため、終盤は優勝候補だけでなく、その所属チーム全員が居なくなる、という大波乱が起こった。
それにしても、日頃からドーピングに引っかからないよう、熱や咳がでても風邪薬さえ飲まず、サプリメントなどの摂取にも細心の注意を払うなど、一切の薬物もしくはその類の摂取を控えている選手達に何が起こったのだろうか。
過酷なレースであるがゆえに、誘惑に負けて手を出してしまった選手もいるし、いや自分はドーピング違反になるとは知らなかった、と主張する選手もいるが、観る者である私たちは、薬物などの力を借りず、己の肉体だけで困難に立ち向かう姿に感動するのだ。
* 見ている私たちも選手と一緒に、21日間のフランス・ショートトリップへ

このレースのもうひとつの魅力は、TV画面に映るフランスの美しい景色や、観客の愉しい応援風景を見ること。 レースが開催される毎年7月は27ヶ所もの世界遺産を抱える屈指の観光大国、フランスの素晴らしい映像を見ることができる、またとないチャンス。
年ごとにコースが変わるこのレースは、様々なフランスの名所を通過するように組まれている。
今年の特徴は13年ぶりに英国もコースに組み込まれ、トラファルガー広場が壮大なレースの出発点となった。 もちろん、フランス国内では、中世の趣を今に残す古城や大聖堂を初めとする歴史建造物から、一面に広がるひまわり畑、目のくらむような断崖のピレネー山脈やアルプス、そして栄光の最終ゴール地点のパリシャンゼリゼ通り。
その他にも選手が通り過ぎる、名も知らぬ小さな街のたたずまいも、見る者を小さな旅情へ誘ってくれる。
ちなみにTV中継はココ最近、深夜の場合が多く、気軽に見れないのが現状だ。しかし、ネット上で様々なツール・ド・フランスのサイトが開設されているので、それらでリアルタイムな情報を得ることができる。
中でも「masciclismo」では現地まで足を運んでレポートをしているので、かなりコアな情報も得られる。
http://masciclismo.web.infoseek.co.jp/index.html
* アームストロング以来のスター誕生の予感!?スペインの若手闘牛士
『アルベルト・コンタドール』が若干24歳にして総合優勝! スペイン人の総合優勝は1991年から1995年まで5連覇をなしとげたミゲール・インデュライン以来12年ぶり。
もともとは同じチームに属するエース、ライプハイマーという選手のアシスト役であったアルベルト・コンタドールであったが、過酷な山岳ステージで強さを発揮し、総合優勝を果たした。
ちなみにこのコンタドールが乗っていたバイクのメーカーはトレック(アメリカ)。
7連覇を果たしたランス・アームストロングも愛用していた、アメリカのトップブランドである。
今年もトレックに乗っている選手の活躍が目立った。
次回は、あのランス・アームストロングにスポットを当てて話をしたい。
写真提供: 自転車レース応援サイト『mas.ciclismo(マス・シクリスモ)』






