愛車

2007/03/16

アラスカン・キャディラックと“玩具のまち”

“玩具”は眺めているだけではつまらない。遊ばなくては。
四駆が当たり前のまちは、おもちゃの国に迷い込んだようだった。
そんなまちでのジミー(ブレイザー)体験記。

「やぁ、良く来たね。どうだいこのまちは? ゆっくり見ていってくれよ」
 と、まるでテレビの通販番組に出てくる陽気な男性店員が話しかけてきた。
「このまちで注目されているクルマ? ああ、これだよ」
 とポンと手で軽くたたいて紹介したのが、シボレー・サバーバン。
 そして、一言が付け加えられた。

「アラスカン・キャディラック」

 今ではキャディラックブランドの四駆があるが、99年当時にはなかった。そのため、最もハイクラスの四駆をこう表現したのだろう。じっさい、このこのまちでは四駆はファッションではなく生活必需品だ。普通のクルマがは走っている方が少ないくらいだ。冬であれば路面は凍結しており圧雪路も多い。雪が溶ければ、未舗装路が無尽蔵にあるから、いくらハイクラスカーでも二駆では役に立たないのだ。
 
 そして、もう一台、ぽんとたたいて紹介してきたのが、GMC・ジミーだ。

「リアル・キャディラック」

 ウインクしながら紹介したように、このクルマがこのまち、フェアバンクスでは最も現実的でポピュラーなクルマと言えるのだろう。

 ジミーと言ってもピンと来ない人がほとんどだと思うが、アメリカを代表する四駆(日本でも言うようになったがアメリカで言うSUV)であるブレイザーの兄弟車だ。ラグジュアリー感を出したデザインとなっているが、基本的にはブレイザーそのものだ。

 ジミーとブレイザーのようにアメ車の兄弟車の関係は複雑だ。アメリカらしく企業買収が続き今では三大ブランドに収斂されているが、数あるブランドそれぞれが元はメーカーであり歴史を持ち個性を持っている。
 ゼネラルモータース傘下で言えば、スポーティーイメージの強いシボレーとトラックブランドだったGMCがあり、それぞれに同じようなクルマがある。そのため、同じようで違うクルマにするなど差別化をしているためだ。

 かつてのカローラとスプリンターと同じ関係だが、アメリカの場合はひとつのブランド自体が一メーカーほどの規模なので、違うメーカーに同じクルマがあると思えるほどでややこしい。対抗するメーカーにも同じようなクルマがあるから、余計にややこしい。
 さらに、毎年、細かな変更をしていくイヤーモデルばかりなので、何がなんだか分からなくなってしまう。逆に、どこのブランドの何というクルマで何年式と分かることは、ツウ魂、マニア心を刺激することになるので、それはそれでひとつの楽しみ方なのがアメ車かもしれない。
アラスカで


















 話がそれたが、フェアバンクスにあるこの店を訪れたのは、オーロラを撮影しにいくためにクルマを借りるためだ。「オーロラ・モータース」というそのものズバリのベタな店だが、対応は親切。さっそくジミー、いや話が面倒になるのでブレイザーを借り受けて、しばらくの間、真冬のアラスカでの相棒となった。

「郷に入っては郷に従え」。

乗ってみてすぐに思い浮かんだのがこの言葉。大きめで包み込むようなシートや日本ではもっさりと思えるようなハンドリングは、アラスカのような広大な大地ではちょうど良い。先を急ぐな広いんだぜ、急いでもすぐには変わらないぞ、との気分になってしまう。お国柄と言えるのだろうか、こののんびり気分は、当然だが長距離でも疲れない。

 それとどういうワケか、カーステレオでカントリーの専門チャンネルを選んでしまうのが不思議だ。カントリーのCDを何枚か買って日本に帰ってきたが、未だに聞いていないことを考えると、アメリカという国でアメリカのクルマに乗っていたから聞きたかったのだろうか。
 
 ブレイザー。日本で見かけるとアクの強さを感じ、誰でも乗りたがるクルマには見えない。アラスカではごく普通のクルマに見えていたのに不思議なものだ。クルマには、作られた土地事情がありコンセプトがある。最近のクルマの個性を感じないのは、世界中で販売することが目的だから個性を感じないのもしれない。ブレイザーも世界中で販売することが目的だったがまだまだ個性は残っていた。

 アラスカでは、四駆は玩具ではないが、大手を振って乗ることができる四駆好きには理想郷のような土地だ。じっさい、おもちゃの国に迷い込んだようにクルマを運転するのが楽しい毎日だった。

 玩具は眺めているだけではつまらない。遊ばなくては。






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